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犬と猫の「乳び胸」に対する内視鏡外科手術/高性能内視鏡とICG蛍光カメラシステムによって手術の成功率は飛躍的に向上します。

2024.07.07

これらの技術は、従来の開胸手術に代わる新たな選択肢を提供し、より精緻で低侵襲な治療を可能にします。

高性能内視鏡の利点(胸腔鏡、腹腔鏡手術)
高性能な内視鏡は、胸腔内の詳細な可視化を実現します。
この内視鏡を使用することで、胸管の走行を精確に特定し、病変部位の観察が容易になります。
特に、切開が小さいため、手術に伴う動物の身体への負担が最小限に抑えられる点が大きな利点です。
5mmの小さな切開から手術が行えることで、術後の回復時間も短縮され、患者の快適性が向上します。

ICG蛍光カメラシステムの重要性(ICG蛍光法)
ICG蛍光カメラシステムは、事前に投与したICGを用いて、血管や胸管の状態を視覚的に確認する技術です。
これにより、胸管の正確な位置をリアルタイムで把握しながら、必要な処置を行うことが可能となります。
胸管を傷つけずに操作を行うことで、再発のリスクを低減し、犬と猫の乳び胸の治療結果を格段に向上させることが期待されます。

内視鏡外科手術(胸腔鏡、腹腔鏡)と従来の開胸手術の比較
内視鏡外科手術は、従来の開胸手術と比較していくつかの点で優れています。
① 切開の大きさ
・内視鏡外科手術は、5mmの小さな切開(10〜12箇所)で済むのに対し、開胸手術は大きな切開を必要とします。
・これにより、術後の痛みや回復時間が大幅に改善されます(手術後2〜3日で退院することも可能です)。
② 視野と観察
・胸腔鏡手術では、拡大された鮮明な視野を提供するため、より正確な操作が可能です。
・ICG蛍光映像によって、胸管の位置を明確に確認しつつ、繊細な手技を行うことが可能となります。
③ 手術成績の向上
・内視鏡外科手術は、術後の治癒率や合併症の発生率が改善されることが多く、犬における乳び胸の根治的な治療を実現します。
・現在では、90〜100%の手術成績が報告されています。

具体的な治療手順
乳び胸に対するICG蛍光カメラシステムを用いた具体的な治療手順は以下の通りです。
1. ICGの投与: 手術前にICGを注射し、体内で蛍光を発するよう準備します。
2. 内視鏡の挿入: 小さな切開から高精細なカメラを挿入し、胸腔内の様子を観察します。
3. 胸管の確認: 蛍光映像を通じて胸管を確認し、正確に操作を行います。
4. 胸管の処理: 胸腔鏡を用いて胸管が走行する領域を一括結紮(エンブロック法)にて胸管の結紮を実施します。
5. 手術後の確認: 手術後、再発の可能性を評価し、必要に応じて追加のCT検査を行い胸管結紮の確実性を確認します。

このように、ICG蛍光カメラシステムと高性能内視鏡を活用することにより、犬と猫の乳び胸治療はより正確かつ安全に行われ、動物たちの生活の質が向上します。この新しい技術の導入は、獣医療の未来を一層明るくするものと言えるでしょう。

高性能な内視鏡を用いて胸管が走行する領域を観察していますが、肉眼的には胸管の走行を明確に確認することができません。ICG法を行なっていますが、胸管を確認することが難しく、特に大動脈から胸管の剥離を行う際に、細心の注意を払っても胸管を傷つけてしまったり、取りこぼしてしまう恐れがあります。

高性能な内視鏡とICG(インドシアニングリーン)蛍光カメラシステムを用いて、犬の胸管を明確に映し出しています。正確に胸管を保護しながら、取りこぼすことなく処理を行うことが可能となり、犬の乳び胸に対する手術成績を向上させることが可能となります。

高性能な内視鏡を用いて腹部乳糜槽が存在する領域を観察していますが、どの部位を切開すれば良いか不明瞭です。

高性能な内視鏡とICG(インドシアニングリーン)蛍光カメラシステムを用いて、腹部乳糜槽を観察している様子です。明確に腹部乳糜槽を確認し、適切に切開処理することが可能になり、犬の乳び胸に対する手術成績を向上させることが可能となります。

文責:江原郁也
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