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犬の「胆嚢粘液嚢腫」を腹腔鏡手術で治療する

2024.02.01

犬の胆嚢疾患には様々な病態が存在します。
その中の一つが、胆嚢粘液嚢腫です。

犬の胆嚢粘液嚢腫を放置しておくと、胆嚢破裂、胆管閉塞、肝臓の障害(胆管肝炎)へと悪化し、適切な治療が行わなければ命を奪ってしまう恐ろしい病気です。

犬の胆嚢粘液嚢腫を治療するためのポイントは、臨床症状が発現する前に適切に外科的治療を行うことが重要です。

また、胆嚢粘液嚢腫によって起こる様々な症状が発現してしまった状況においては、内科的治療を行い、犬の状態を安定化させた上で手術を行うことが重要です。

例えば、胆管閉塞が起こり、犬の状態が悪い中で手術を行う、または、胆嚢破裂が起こったからといって、慌てて手術を行うことは逆効果になることが少なくありません。
もちろん、解除されない胆管閉塞も多くありますので、獣医師によるその見極め、判断が重要となります。

腹腔鏡手術は、従来の開腹手術に比べ、侵襲が少なく、回復も早いとされています。
また、術後の痛みも軽減されるため、動物の身体にとっても負担の少ない治療法と言えます。

まずは、臨床症状が認められない状況において、切開創が小さく、動物の身体に負担の少ない腹腔鏡手術を行うことをお勧めします。

そして、不幸にも臨床症状が認められてしまったとしても、内科的治療で犬の状態を安定化させることを優先し、腹腔鏡手術を組み合わせることによって低侵襲治療を行うことはとても有益となります。

もちろん、犬の胆嚢粘液嚢腫という病気は、100%助けてあげられる訳ではない恐ろしい病気です。
しかし、正しい病態の把握、適応判断、熟練した技術があれば、治療成績を高めることは可能であると確信します。

動物たちの健康には、飼い主様の目配りやケアが欠かせません。
定期的な胆嚢の腹部超音波検査を行ってあげることはとても大切です。

他の項でも述べさせて頂きましたが、私たちの経験では、胆嚢の腹部超音波検査で異常を認めた犬100例においては、100%の症例で病理学的に異常が認められていてます。よって、臨床症状が認められない段階において、外科的治療を検討することが重要と考えます。

犬の胆嚢粘液嚢腫を腹腔鏡手術で治療することは、手術による治療成績を向上させる一つの選択肢と考えます。

犬の腹腔鏡下での胆嚢摘出術の手術費用についても、お気軽にお問い合わせください。

適切な治療を行うことができれば、手術後、犬は元気に過ごすことができます。
動物たちと共に、幸せな時間を過ごすことができるように願っています。

写真は、一番最近の手術ですが、胆嚢粘液嚢腫を腹腔鏡手術で治療して元気になってくれた”小奈利ちゃん”です。かなりの癒着がありましたが、腹腔鏡手術で無事に治療することができました。”小奈利ちゃん”は、手術後2日目には元気に回復してお家に帰ることができました。開腹手術であれば、こんなにも早くに回復はできなかったと思います。

写真は、飼い主様との連携、主治医様のご協力もあり、適切なタイミングで、胆嚢粘液嚢腫を腹腔鏡手術で乗り越えて元気になってくれた坊矢ちゃんです。坊矢ちゃんも胆管閉塞がありましたが、手術後早くに元気になってくれました。腹腔鏡手術によって身体への負担が最小限になったからこそだと思いました。

写真は、私の愛犬ニコと腹腔鏡下胆嚢摘出術を行った3日後のきずあとの様子です。
大切な家族なので、1.6mm、1.6mm、3mm,1cmの小さなきずで手術を行いました(2017年)。

文責:江原郁也
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