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2024.05.19
”ももちゃん”は、ヨークシャーテリア、14歳齢、体重1.1kg。
手術を決められたのは、健康診断で行った腹部超音波検査で、胆嚢内結石(胆石)と、胆嚢壁の肥厚が認められたことでした。
”ももちゃん”の体重が1.1kgでしたので、飼い主様は腹腔鏡手術は難しいのではと考えておられました。
腹腔鏡下胆嚢摘出手術は問題なく終了し、”ももちゃん”は麻酔からも速やかに覚めてくれました。
そして、食欲、元気も順調に回復し、手術の翌日には元気に退院してくれました。
胆嚢の病理検査結果は、リンパ球形質細胞性胆嚢炎(慢性胆嚢炎)、肝臓は軽度の肝細胞変性でした。
また、胆嚢内容物の細菌培養検査の結果においては、緑膿菌が検出されました。
”ももちゃん”は、手術前には食欲、元気もあって、特に健康を損なっている様子は認められませんでした。
しかし、実際には、胆嚢や肝臓の病態は進行し、胆嚢内には緑膿菌という抗生物質が効き難い細菌感染が起こっていました。
手術後、1.1kgのももちゃんの体重は、1.5kgと増加してくれました。
このように、臨床症状が認められない段階において、腹腔鏡手術での外科治療を行うことによって、元気になってくれることを数多く経験します。
従来の開腹手術においては、動物たちの身体への負担が大きいことから、臨床症状が認められない段階においては、様子を見過ぎてしまうことになりがちです。
しかし、犬の胆嚢粘液嚢腫、胆嚢炎、胆石症などの胆嚢疾患は、様子を見過ぎることによって、胆嚢破裂、胆管閉塞、重度な肝臓の胆管肝炎に進行し、救命率を低下させてします。
望まれることは、定期的な健康診断によって、胆嚢の超音波検査を受けられることです。
そして、もし異常が認められた場合、腹腔鏡下胆嚢摘出術によって、”最小限の負担”で治療してあげることを検討してください。
飼い主様は、「体重が増えました。手術うまくいってどうもありがとうございました。」と喜んでくださいました。
例え、小さなワンコちゃんでも、腹腔鏡下胆嚢摘出術は安全に行うことが可能です。
もちろん、手術経験が豊富で、熟練した技術を持った獣医師による手術であることが前提です。
犬の胆嚢疾患(胆嚢粘液嚢腫、胆嚢炎、胆石症など)で、命を落としてしまう子たちを、少しでも多く救命できればと願っています。
手術実施病院:おおた動物病院(埼玉県おおみや市大宮区)
手術内容:腹腔鏡下胆嚢摘出術
文責:江原郁也
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ももちゃんです。