副腎摘出術

副腎摘出術

犬の副腎腫瘍は、犬の副腎と呼ばれる内分泌腺から発生する腫瘍のことを指します。副腎は体内のホルモンの分泌に関与しており、その異常な成長や機能の変化によって腫瘍が発生することがあります。

主な副腎腫瘍の種類

副腎皮質腫瘍(Adrenal Cortex Tumors)

副腎の外側の部分でホルモンを分泌する部位から発生する腫瘍です。アデノーマ(良性腫瘍)やアデノカルシノーマ(悪性腫瘍)などが含まれます。ホルモン異常によってさまざまな症状を引き起こすことがあります。

副腎髄質腫瘍(Adrenal Medulla Tumors)

副腎の内側の部分でアドレナリンやノルアドレナリンなどのホルモンを分泌する部位から発生する腫瘍です。主に褐色細胞腫が該当し、高血圧や徐脈などの症状が見られることがあります。

症状

副腎腫瘍の症状は、腫瘍の種類や位置、ホルモンの異常分泌の有無によって異なりますが、一般的な症状としては次のようなものがあります。

食欲不振、嘔吐、下痢や便秘、体重の増加または減少、脱毛、飲水量の増加、尿量の増加、腹部の腫れや痛み、血圧の異常

診断と治療

副腎腫瘍の診断には、獣医師が臨床症状や画像検査(超音波、X線、CT、MRIなど)を用いて行います。また、ホルモンの異常分泌が疑われる場合には血液検査も行われることがあります。治療法は腫瘍の種類や進行度によって異なりますが、外科的摘出が一般的なアプローチとなります。副腎腫瘍の治療には、早期の発見と適切な治療が重要です。

腹腔鏡下副腎摘出術

犬の腹腔鏡下副腎摘出術は、腫瘍を持つ犬の副腎腺を取り除くための外科手術の一種ですが、従来の開腹手術よりも小さな切開を使用して内視鏡を用いて行われる手術方法です。これにより、犬の回復期間が短く、痛みが少なくなる可能性があります。以下は、腹腔鏡下副腎摘出術に関する一般的な情報ですが、具体的なケースによって手術の方法やプロセスが異なることがあります。

診断と評価

獣医師は犬の状態を評価し、副腎腫瘍の有無や性質、位置などを確認します。超音波やCTスキャンなどの画像検査が行われることがあります。

手術の準備

犬の状態に応じて、腹腔鏡下手術が適切かどうかを判断します。犬の一般的な健康状態や腫瘍の性質に基づいて、手術計画が立てられます。

手術

手術は全身麻酔下で行われ、小さな切開を通じて内視鏡が挿入されます。内視鏡を介して副腎腺を観察し、必要に応じて腫瘍を取り除きます。内視鏡の映像をモニターで見ながら手術を行うため、外科医は高い精度で操作できます。

術後管理

手術後、犬は適切なケアと監視が必要です。傷口のケア、痛み管理、抗生物質の投与などが行われます。犬の体調と挙動の変化を注意深く観察し、合併症の早期発見と処理が重要です。

フォローアップ

手術後の経過を獣医師と共有し、定期的な検査とフォローアップを行います。副腎腫瘍の性質によっては、副腎の機能や犬の健康に影響を及ぼす可能性があるため、継続的なモニタリングが重要です。

腹腔鏡下副腎摘出術のメリット

小さな切開

クッシング、糖尿病状態の動物に対する感染、裂開のリスクが最小限となり、開腹手術と比較して、傷の治癒が速やかであり、裂開のリスクが最小限、術後管理が容易となります。

低侵襲治療

開腹手術では、広範囲な腹壁切開が必要ですが、腹腔鏡手術では痛みが少なく、術後回復が早い低侵襲治療として認識されています。

繊細な手術操作

腹部背側(深部)へのアプローチが容易であり、拡大された鮮明な視野を確保することで、副腎と周囲組織の明瞭な描出(剥離層、微細血管の確認)を行い、繊細な手術操作が可能となります。

消化管機能の温存が期待

外気への暴露が最小限であるため、消化管の湿潤環境を保持することが可能となり、消化管機能の温存、癒着が少ないなどが期待できます。

デメリット

手の感覚が伝わり難い

内視鏡手術専用鉗子を用いることにより、手の感覚が伝わり難く、副腎への刺激、被膜の損傷を誘発しやすくなり、ホルモン分泌の誘発、腫瘍組織の播種のリスクが増大します。

大出血への対処が難しい

後大静脈、腎静脈の損傷を引き起こした場合、大出血への対処が難しくなります。

副腎腫瘍
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